忍者ブログ
ゲーム系ニ次創作です
[10]  [9]  [8]  [7]  [6]  [5]  [4]  [3]  [2
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

↓マサケイです。
 爪子さんの慶示板に投稿した物です。

 意識が戻って最初に聞いた言葉は……
「うわ〜ん、まつ姉ちゃんゴメンよぉぉ」
 ……だった。
 果敢なくなって、地獄巡りの旅にでも出るかと思っていた政宗、瞼を上げた隻眼が見たのは杉板の天井だった。
 ---Hellってのも……案外浮き世に似たもんだな……----
 ぼんやりとした頭に先程の声が聞こえて、自分は死んではいないのだと思ったのだが……。
「……どこだ…ここは……」
「キキ…?」
 見回そうとした目線の先に、小猿の顔があった。
「夢吉…?」
「キv」
 名前を呼ばれたのが嬉しいのか、小猿が政宗の髪の毛に摺りよった。
「あ!!まつ姉!気がついたよ!」
 身体を起こす事が出来ない政宗を、右から慶次、左から美貌ながら活発な印象の女が覗き込んだ。
「気がつきましたか?」
 まつ姉ちゃんと呼ばれた女の顔をぼんやりと眺めて……政宗、その名に聞き覚えがあった。
 ---前田利家……そっか……前田か……----前田利家、槍の又左といえば剛の者、勇猛を持って語られる事も、傾奇者として語られる事も多い者。美貌の室の噂も高い。
 ---but……こいつが又左…?---いや、まつの態度をみるとそうでは無さそうだ。政宗、芋蔓式に記憶を辿った。---甥…派手な甥がいるはずだ……前田慶次郎……そうか…---得心がいった。まつの子供扱いもそれならば解る。
「ここがどこか尋ねてはいけませんよ。そして、貴方も名乗ってはいけません」
 凛とした声に言われて、政宗開きかけた口を閉じた。まつはきっと、自分の素性を知っている。隻眼に六爪……解らない方がどうかしている……政宗口許が弛んだ。
「ええ〜!?名前くらいいいじゃん!名無しじゃつまんな…ぎゃん!!」
「怪我に障ります。静かになさい」
 拳骨をもらってふて腐れる慶次、ぶつぶつと文句は言っているが面と向かっては逆らえない。
「…礼は言ってもいいかい?」
 政宗に尋ねられて、まつが小さく頷いた。
「夢吉…thank you,so much…お前は命の恩人だぜ」
「え!?俺じゃないのかよ!」
 目を真ん丸にした慶次、布団に寝かされた政宗に掴み掛かりそうになって、またまつに拳骨をもらっている。---ほんとに…このangelはdomesticだぜ…---笑いを堪えると腹に痛みが走ったが、怪我の手当ても済んでいるようだ。
「まだ食事は無理ですから、眠っていなさい」
 慶次の耳を掴んだまつに言われ、政宗も素直に頷いた。まつの飾り気はないが善良で美しい心根は政宗にも分かった。
「厄介を掛けてすまない」
 手当ては受けても、出血は多かった。瞼を閉じると政宗そのまま眠ってしまった。

 やはり傷付いた身体の疲労は酷く、政宗は丸二日眠っていた。
 怪我人を休ませるように言われた慶次も、気掛かりだが部屋の中には入らないようにしていた。
 ---綺麗な顔してるよな---目を閉じた政宗の端正な横顔を、慶次飽きもせずに何刻も見ていた。
 二日目の夕刻、穏やかだった政宗の寝息が乱れた。
「え…?痛い…?」
 廊下から眺めていた慶次が近寄ると、政宗の隻眼から涙が零れている。顰められた眉も苦しげな様子に、慶次どうしていいか解らない。
「……mum…」
 唸り声のような言葉は、慶次には理解出来なかったが誰かを呼んでいるのか何度も繰り返し政宗の唇から零れる。
 悲しそうな声。気の強さは顔相に現れている。それがこんなにも心細げに誰を呼ぶのだろうか……。
 慶次、そっと政宗の手を握った。
 ひやりと汗に濡れた政宗の掌に自分の掌を重ねて、自分の熱を分けようとでもいうのか………。
「だいじょうぶだよ…?医者も来たし……傷も塞がったんだよ…?」
 汗ではり付いた前髪をかきあげてやると、涙に濡れた隻眼が開いた。
「……angel……」
 目を開けた政宗、あやすような眼差しを自分に向ける天使を見た。
「えんじぇるって何だよ?旨いの?それ」
 政宗の手を握っていたのが、なんだか恥ずかしくなって慶次照れ隠しに尋ねた。
「食い物じゃねーよ」
 政宗も自分の手のありかに気付いて、気恥ずかしくなった。最近は見る事も無くなった幼い頃の夢……自分の城にいれば、小十郎が声を掛けて起こしてくれたが………。その夢を見ていた事も、泣いているらしい事も……気恥ずかしくて仕方が無い。
「angelってのは………脳天気な、お調子者の事だ」
「なっ!なんだよ!俺心配して連れて来たのに!!」
 怒って立ち上がった慶次、どかどかと足音も荒く部屋を出て行ってしまった。
「……pure…sweet……まさにだな」
 慶次の去った後には、桜の花びらが散っている。
 政宗、それをひとつ摘まみ上げた。
 ---前田慶次…噂に違わぬ傾奇者だな---
 淡く香る花の香りに安堵して、政宗また目を閉じた。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
この記事のURL:       
忍者ブログ*[PR]