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ゲーム系ニ次創作です
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お題二つ目です



↓マサケイです。Cherryblossumの後のお話です

 縁側で昼寝をしている慶次の鼻を、何か甘い香りが擽った。
「…ん……ぅんん…」
 夢うつつの中で、慶次は覚えのある甘い香りに鼻を鳴らした。
 目を覚まさずに鼻をひくひくと動かしている慶次の寝顔を見て、政宗は唇の端を上げて笑みを浮かべた。縁側に腰を下ろした政宗の指先に、橙色の小枝がある。その小枝で、慶次の鼻を擽るようにしているのだ。
 まどろむ寝顔は愛らしいが、武人としても名高い前田慶次、その慶次が安心しきった寝顔を見せている上に、これだけ近くに身を寄せても起きる気配さえ無いのが、政宗には嬉しかった。それだけ慶次が自分には心を許しているのだと思うと、強面の独眼竜も蕩けるような笑顔になってしまうのだ。家臣の誰かが見ていたら、これが我らが筆頭かと腰を抜かしかねないが……、政宗も慶次の前では飾らない腕白小僧の顔をしていた。
「まつ…ねえちゃん……もう、食えないよ…」
 ふにゃん、と蕩けた声を聞いて、政宗の眉がピクリと上がった。
 家に帰った夢がこんな顔をさせているのか……、そう思うと政宗は少し腹立たしく思った。
 花を摘んだ指先が引っ込むと、…六爪を操る強い指が慶次の鼻を抓った。
「うぇっ!ひゃにゃっ!」
 ぐいと抓んだ鼻を引き上げられて、慶次が可笑しな声を上げた。
「何すんだよ、だーりん!」
 飛び起きた慶次が、政宗の手を振り払った。
「sorry、まつ殿じゃなくてな」
 赤くなった鼻を擦っている慶次を、政宗の隻眼が睨みつけた。
「え?まつ姉ちゃんがどうしたんだよ」
 慶次が政宗の顔を覗き込む。慶次の目は、いつ見ても秋の空のようだと思う。高く澄んだ秋の空のような瞳に見つめられ、政宗が目を逸らした。いつまでも、いつまでも覗き込んでいたい気持ちもあるのだが、見詰め返す眼差しに気恥ずかしくなってしまう。
「あ、そうだ。なんかいい匂いしてたんだ。何の匂い?」
 政宗に目を逸らされても気にしない、慶次がきょろきょろと辺りを見回した。
「ああ、これか?」
 目の前に差し出された小枝に、慶次が目を細めた。
「うん、いい匂いだね」
 政宗の指に鼻を近づけて、慶次が目を閉じる。
 甘い香りは金木犀の香なのだが、政宗にとっては目の前に慶次の方が甘く愛らしい。さっと金木犀の枝を引っ込めると、政宗は慶次の唇に触れた。
「な…こんなお天道様が高いってのに……何すんだよ…」
 掠めるように触れただけなのに、慶次の頬が朱に染まっていた。
「昼日中だろうが、真夜中だろうが、俺はkissしたい時にするぜ、honey」
 にやりと政宗が笑うと、一瞬見惚れたように政宗を見た慶次が首を振った。
「駄目。俺、この間小十郎さんに叱られたよ。家臣の士気が下がるから……その…だーりんと……」
 人前でイチャイチャするなと釘を刺されたのだが、いつも仕掛けるのは政宗の方なのだ。しどろもどろになった慶次の肩を引き寄せると、政宗は深く口を吸った。
「もう!俺の話聞いてないのかよ!」
 政宗を引き剥がしても、息が荒くなっている慶次が言うと、
「ああ、聞いちゃいねーな」
 政宗がまた笑った。
「もう!」
 慶次に覆いかぶさって、また口づけようとしている政宗の頬を、大きな手が挟み込むと両方の頬を抓った。
「いてっ」
 流石に頬を抓って引っ張られたら、政宗も引き下がるしかなかった。
「判った、判った。あんたが俺よりも小十郎の言う事聞くのはよく判ったよ」
 慶次に抓られた頬を、大袈裟な仕草で擦りながら言う政宗の肩に、慶次がそっと頭を乗せた。
「…小十郎さんは、竜の右目だから仲良くしろって…、言ったのはだーりんなんだからな」
 小十郎は小姑みたいに口うるさいが、政宗がそう言ったからなるべく言う事を聞くようにしていると言った慶次に、政宗が笑いだした。
 ……参るよな……。慶次のこの大らかさや、素直さが、辛い過去を乗り越えた後にも失われていない事に、政宗は何度も驚かされる。自分の事はあまり語らない慶次だったが、ぽつぽつと語られた出来事を政宗なりに繋ぎ合わせ、この傾奇者の中にも深い喪失の悲しみがある事を知っている。それでも、慶次は人を信じ、人を愛する。
「そうだな。…でも、俺がjealousyを感じない程度にしてくれよ?俺は、あんたの口から俺以外の名前が出てくるのさえ耐えられないようなjealous personなんだから」
 肩に乗せられた慶次の頭に、政宗がそっと口づけた。
 やはり、政宗には慶次が金木犀よりも甘いのだが……、それはただ可愛らしいだけでは無い。傷つく事を知っても、人を恋する気持ちを失わない強さ、その慶次の強さが政宗には愛しかった。
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