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ゲーム系ニ次創作です
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拍手下さった方、ありがとうございますv


お久しぶりです……(汗)
こんな放置状態のところにいらして下さった方、本当にありがとうございます(ペコリ


↓かなり久しぶりの更新です、…しかもよそにお嫁に行っていた物です

 朝から政宗の家に行った慶次、ハッチバックを開けて相棒の『ちびちゃん車』に荷物を積みこんだ。
「ピクニックの道具なんて、しばらく見てなかったな」
 大きなバスケットはもうお弁当を詰めて慶次が家から持ってきたものだった。その横に、大きなスクリーンタープ。ベージュの麻で出来たマット。コールマンのキャプテンチェア。積み込むのを手伝った政宗もいつから家にあったか分からないと言った年代物のピクニック用品たち。慶次のピンクの車とは何故かしっくりと溶け合った。
「政宗も一緒に行けばいいのに」
 道具を貸して欲しいと言われた時にも誘われたが、政宗は断った。
「Don't be silly!俺はそんなにrusticじゃねーよ」
 最近、大きな手打ちがあって、政宗と小十郎は一緒に出掛けている事が多かった。その埋め合わせに小十郎に休みをやったのだ、自分が付いて行っては意味がないだろうと、政宗が笑った。
「ほんとは、二人っきりがいいんだろーが」
 こつん、とおデコを小突かれて、慶次の顔がにんまりと笑った。
「俺に気ぃ使う事ねーよ。俺は俺で忙しいんだよ」
 政宗の手がハッチバックを閉めて、慶次の肩を叩いた。
「あいつも疲れてるから……労わってやってくれ」
 何があったのか。何をして来たのか……。慶次は政宗にも小十郎にも何も聞かない。言われたわけではないが、聞いてしまうのはいけないように思っていた。
「うん!行ってきます!」
 これ以上誘っても、政宗は行かないだろうと…慶次、助手席から小さなバスケットを出した。
「これ、政宗の分だよ」
 手渡されたオープンバスケットの中には、サンドウィッチとオレンジが入っていた。
「…あっ!もう大丈夫だからね!ちゃんと先週のお料理教室で作ってみたんだから!」
 政宗の驚いた表情に慶次が膨れて抗議した。
「誰もそんな事言ってねーよ。旨そうだから驚いただけだ」
 驚いたのは、本当に自分の分があったからだ。一緒になどと言うのは社交辞令のようなもの、政宗に気を使っているだけだと思っていた。
「ほんとに!やったー!小十郎さんに教えなきゃ、政宗に褒められたって!」
 無邪気に喜ぶ慶次に、政宗も目を細めた。
「Thank you昼に喰うよ」
 ドアを閉めてやって、大喜びのままの慶次に手を振った。
 ……調子が狂うヤローだな……慶次に掛かれば、政宗も普段の強持てではいられない。


 途中で、ワインを買っていた小十郎を拾って慶次の『ちびちゃん車』は走る。
 初夏の少し強い日差しの中、市街地を抜けて、国道を行き過ぎて……慶次が見つけておいた取って置きの川原を目指して行く。


 平日の昼間だ。河川敷の公園には犬を連れた老人が一人二人いるだけだった。
 その川原に車を止めて、マニュアルの無くなってしまったタープを二人でああでもない、こうでもないと四苦八苦しながら組み立てた。緑色のタープの下にキャプテンチェアを二つ並べ、お弁当のバスケットやワインも車から降ろした。
「小十郎さん、おなかすいた?」
 政宗に褒められたサンドウィッチを見せたくて慶次が聞くが、
「いや。腹はへってないが…疲れた……」
 小十郎には珍しい言葉が返ってきた。
「あ……じゃぁ、マット出して昼寝する?」
 慶次が慌ててマットを取り出して広げ始めた。
「悪いな。折角の休みなのに……」
 余程疲れているのか、慶次が広げたマットの上に小十郎がごろりと横になった。
「ううん……」
 ごめん、と謝りそうになって……慶次も黙って小十郎の隣に横になった。
 自分が謝ると、小十郎が辛い顔をする。……最近の忙しさを、小十郎も説明するつもりはないのだ。最低限、慶次が身を守る為に守らなければならない約束をしただけで出掛けて行った小十郎。今更何があったのかは説明できない。
 目を閉じた小十郎の横顔を見詰める。
 出掛ける前より頬がこけているように見える。
 ……駄目だよね……聞けない。今あるこの時はおとぎ話の中の出来事のようで……慶次が聞きたがったら、この時間は失われてしまうように思えた。
 ……小十郎さんが何をしたって……小十郎さんなんだもん………慶次も生半可な決意で小十郎の元に来たわけではない。覚悟は何度もしたはずだった。何があっても離れない。たとえ小十郎に追い出されたとしても…絶対に離れない、慶次そう決めていた。

「…すりすり……」
 眠っているか、目を閉じているだけなのか分からない小十郎の肩に、自分の肩を寄せてみた。……おそろいの華。慶次の肩にある花がそっと小十郎に寄り添った。
「すりすり……」
 もう一度体を寄せると、小十郎が目を開けた。
「ん?」
 慶次の顔を覗き込むと…マットの端を掴んだ慶次が敷いているマットごと小十郎に覆い被さった。
「おわっ」
 大きなマットは、大きな二人をすっぽりと包み込んだ。
「…どうした…?」
 慶次の目を見詰めて、小十郎が聞いた。答えないと……慶次が答えないのを知っていても、小十郎は尋ねてしまう。
「だって……キスしたかったんだもん」
 慶次の唇が小十郎に触れた。
 柔らかく包み込むような慶次のキス。
「慶次……」
「…キスしよ……いっぱい」
 癒すように触れる慶次の唇。ここにいるのは、唇が触れ合っただけで真っ赤になって泣いてしまいそうな目をした慶次ではなかった。
「ああ……いっぱい、してくれよ」
 小十郎、自分の上に圧し掛かっている慶次の背を抱きしめた。
「慶次…」
 唇が離れるのが淋しいように、小十郎が慶次の名前を呼んだ。
「俺に、いっぱいキスをくれ」
 頷いた慶次の閉じた瞼が近づいて来る。
 小十郎の痛みを知るように、小十郎の傷を知るように、慶次の柔らかい唇が癒して行く。
 ……すっかり、守ってるつもりでいたな……慶次を守っているつもりが……この優しい腕に守られていた…。
「慶次…俺の側を離れるなよ……」
 いつまでと、約束の出来ない約束。それでも、小十郎は言わずにいられない。
「うん…離さないでね…」
 慶次もこれが本当の約束として果たされない事は分かっている。
 でも、今はおとぎ話の中。
 抱きしめる腕と、優しい唇だけがある。
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