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ゲーム系ニ次創作です
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随分久しぶりの更新になります……しかも、七夕に間に合わず……


↓コジュケイです。
 ……コジュケイの現パロは書き続けると悲しい結末になりそうで…ちょっと切ないです。

 土砂降りの中を帰ってきた小十郎、駐車場のピンクの車に溜息を吐いた。
 ――七夕だから、ご馳走作るよ!――朝の慶次の笑顔を思い出すと、もう一つ溜息が出た。
 料理教室の成果も着実にあるようで、慶次はレシピを見なくても作れる料理が増えて行った。もう、材料が何だったのかと恐る恐る食べるような物は出て来なくなっていた。そして、何かにつけてご馳走を作ると張り切っていた。お節は政宗にも手伝ってもらって頑張っていた様だったし、バレンタインデーにもケーキを作っていた。ひな祭りにはちらし寿司、端午の節句には海苔巻き……今日はご馳走を作るよ、と言う慶次が可愛らしくて……だが、小十郎はそのほとんどを夜中にもそもそと食べる事になるのだ。ひな祭り辺りが、まともな時間に帰って来れた最後だったかも知れない。その後にあった豊臣と徳川の手打ち式。だが、手打ちとは言っても現実は変わらずに小競り合いは続いていた。ある意味、手打ちに名を借りた『踏み絵』であったかも知れない。豊臣傘下でも徳川よりの組もあれば、逆もある。豊臣の先代、織田組時代からの傘下の組には、現在の豊臣会に不満を持つ者もあった。そして、慶次の叔父のようにどちらにも付かない組もあった。政宗の伊達組は徳川に付いた。現組長と言うよりは、跡取りの家康と親交の深い政宗が徳川に付く事は成り行き上誰の目にも明らかだったが、政宗が動いた事で豊臣離れに拍車がかかったと言って良かった。手打ち式に政宗に同行した小十郎は豊臣の若頭の竹中が気になって仕方がなかった。
 ……慶次とも関わりがないわけじゃねーしな………慶次が仙台に来るきっかけになったのが秀吉だ。秀吉が是が非でも慶次を自分の組に入れようとするのに対して、加賀の前田組が安全を図るために政宗に慶次を預けたのが小十郎との出会いだった。その頃にはこんな風に一緒に暮らす日が来るとは思っていなかった。だが、慶次は小十郎と一緒にいることを望んだのだ。今では、小十郎も慶次と離れて暮らすことなどは考えられなかった。自分が足を洗う事ができれば……小十郎も考えなかったわけではない。慶次と暮らし始め、もうどうしても手放すことは出来ないと知った時に、小十郎も杯を返す事を考えなかったわけではなかった。慶次と二人、自分は趣味の菜園を仕事にしてもいい……そんな夢を見てしまった事もあった。だが、小十郎は竜の右目。政宗は小十郎が生涯を掛けて付いて行くと決めた者だ。
 ……俺は…お前に何もやれないんだな……小十郎に何もかもをくれた慶次。小十郎は応えてやる事が出来ない。
 マンションを見上げると、小十郎の部屋に灯りが灯っている。一年以上になる。真っ暗な部屋に帰らなくていいようになって、もう一年以上が経っているのだ。
 凡そ小十郎では掛けない明るいブルーのカーテンの向うで愛しい影が揺れた。
 見上げる小十郎の前で窓が開いて、小さな笹の枝を持った慶次がベランダに出てきた。
「あ…小十郎さん!何してんの?早く上がってきてよ!」
 笹を振って笑う慶次の笑顔。その笑顔が愛しくて堪らない。
「おう」
 口元が綻ぶのを抑えきれずに小十郎が言った。
 早く早くと騒いでいる慶次に手を振って、小さなエントランスに入る。
 だいぶ旧式のエレベーターを待って、ポケットに手を入れた小十郎。ポケットの中にある小さな紙切れを握る。昼間事務所でも大きな笹を出す若い者が小十郎にも短冊をくれたのだ。七夕飾りに下げることはなかったが、小十郎の願いを書いた短冊はポケットの中にあった。

「お帰り!小十郎さん!」
 子猫と慶次が出迎える。
「ワイン冷えてるよ。政宗んとこから白ワインくすねて来ちゃった」
「おう」
「着替える?お風呂入っちゃう?」
 小十郎の周りを嬉しそうに付いてくる慶次の足元ににぃにぃと鳴いている子猫がいる。
 ……こんな暮らし…考えた事もなかったな………小十郎の腕が慶次の肩を引き寄せた。
「ん?なぁに?」
 引き寄せられた慶次が悪戯っぽい目をして小十郎を見た。
「ご飯?お風呂?それとも…俺?」
 聞いた後で自分で大うけして笑っている慶次の肩を小十郎が抱きしめた。
「こ…小十郎さん…?」
「『俺』がいいんだが……」
「え…?え?えええ?」
 エプロンをつけたまま寝室に引っ張って行かれて、慶次の顔が真っ赤になった。
「ちょ…待って、俺風呂入って……小十郎さん…?」
 昼間から色々買出しに行ったりして汗を掻いていると言おうとした慶次だが、小十郎が自分の首に顔を埋めたままでいるのに訝しげな声で聞いた。
「少し…甘えていいか…?」
 黙ってしまった慶次に小十郎が言った。
 小十郎の言葉に慶次の頬が緩んだ。
「うん。……小十郎さんが甘えてくれたら…すごく嬉しいよ、俺」
 慶次の大きな、けれど綺麗な指先が小十郎の傷のある頬に触れた。
「いっぱい甘えてね」
 小十郎の額や髪に口付けて、慶次の声が甘く響く。
 ……俺もやきが回っちまったな……自分は狡いのだと思う。慶次から貰うばかりで何も返してやれないのに……この腕を、胸を放す事は出来ないのだ。
 小十郎のポケットの中の短冊。それにはただ一言――ずっと――それ以上は書けなかった。ずっと一緒にいたい。小十郎の心はそれを願っているだけなのだが、それはずっと慶次を縛ってしまうという事なのではないか…慶次の未来を摘み取ってしまうのではないか……それでも、小十郎は、ずっと、と言う言葉を書いてしまったのだ。
「小十郎さん…」
 ベッドに押し倒された慶次が小十郎を呼んだ。
「ん?」
「ずーっと…一緒にいてね……約束」
 慶次の小指が、小十郎の眼前に出された。
 じっとその指を見ていた小十郎だが……次第にその指はぼやけてきた。
「小十郎さん…?」
 少し困ったような顔で微笑む慶次。声も無く涙を流す小十郎の顔を抱きしめた。
「…うん…ありがとう…小十郎さん」
 こうして受け止めてくれる腕がある。小十郎の孤独を慶次が埋めてくれる。
 笹には下げられなかった願いは、慶次の胸に吸い込まれた。
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