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ゲーム系ニ次創作です
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↓チカダテラストです。
 私、元親に夢見過ぎかも…… 
 甘い、しかもクサイ……

 震える政宗の背を元親が抱きしめた。
「しょうがねぇよ……そいつらと添い遂げられねぇのは…俺に逢う為だったんだから」
「…元親……」
「あんたは、俺に逢うために一人でいた……そうだろ?」
 元親の腕の中で、政宗が僅かに振り返る。
「この腕の中に納まる為に……あんたは誰のモノにもならなかった。そうだろ?」
 政宗の手が、元親の手に重ねられた。
「片倉さんはそれこそ、あんたがガキの頃から一緒にいる……あんたの大事な右目だ。でもよ、あんたが終世を誓う運命の相手じゃねぇ」
 元親が政宗の肩を掴んで、自分の方に向けた。
「俺にしろよ、政宗」
 じっと見詰める元親の目は、政宗の視線を捉え、絡めとり……縋るように見詰める。
「陸に上がれば、あんたにとって俺は頼りにならない男かも知れねーけど……船の上じゃ、絶対にあんたを守ってみせる」
 元親の銀色の髪を透かして月光が政宗の隻眼を照らす。
「俺を選んでくれよ、政宗。俺はあんたと夫婦になりてぇ……」
 見詰める眼差しには政宗しか写っていなかった。
 ……この男は…こんなにも俺を思ってくれているのか………
「ま…政宗…な・泣くなよ……そんなに嫌か…?」
 ……Jesus…俺は泣いているのか……元親といるとみっともない事ばかりしてしまう。誰かに縋ろうなんて考えた事は無かった。誰かを失ったら生きて行けない、そんな女々しい生き方はしないつもりだった。
「…tears of joyだろ?ばか」
 政宗の体が元親の胸にしがみついた。
「ずっと…恐かった……あんたは俺を置いて海に帰っちまうんだって……」
「政宗」
「これ以上好きにならないように……これ以上、あんた無しじゃいられなくならないように……ずっと、我慢してた……」
 胸に顔を埋める政宗の肩を、元親の腕が抱きしめた。捕まえていなければ消えてしまうかも……政宗はそれほど儚く見えた。自分を打ち負かした男なはずだった。這い蹲って見上げた顔は憎たらしいかと思ったが……見惚れるほど美しかった。身を繋いでも心を許さない政宗がじれったく、どうしても手に入れたいと思った。
 元親を受け入れた政宗は傷だらけだった。体の傷は記憶を呼び覚ます痕でしかなかったが、政宗の心は傷付いたままだった。血みどろの政宗。噴出す血を忘れる為に、戦で己を追い詰める。
 竜ではなかった。
 元親の腕にいるのは、置き去りにした心の所在を探す一人の男だった。男とも呼べないかも知れない。政宗は傷付いた心を子供の自分から切り離して、置き去りにしてきたのだ。誰よりも強くなる為に、誰にも負けない為に……。置き忘れた心は子供のまま、元親の真摯な求愛に戸惑うような子供だったのだ。
「可愛いぜ、政宗……そんな我慢はいらねーけどな……」
 抱きしめる、抱きしめる、抱きしめる……元親の腕はただ抱きしめる。政宗が消えてしまわないように、政宗が壊れてしまわないように、政宗が……安らかな涙を零せるように……。ただ、ただ元親には愛しいのだ。
「可愛い……可愛くて仕方ねぇ……」
 政宗が無様だと思う姿を、元親が可愛いと言う。大の男が可愛いなどと言われて喜ぶものではないが、政宗の乾ききっていた心には元親の言葉が染み込んで行く。
 舎利頭を踏み砕いて、覇道を歩くしかない生だと思っていた。たった一人、黄泉路の共は家臣と国。伴侶を持つ事などないと思っていた。しかも、その相手が自分を守りたいと言うなどとは思ってもみなかった。
「ずっと……ずっと?元親…?」
「ああ……ずっとだよ」
 どちらも、いつ戦で果てても不思議はない者だった。だが、元親は誓いたかった、政宗に永遠を……。
 政宗の喉を嗚咽が漏れた。元親に抱きしめられた肩を震わせて、政宗声を上げて泣いた。
 みっともなくていい……この男になら、どんな姿も晒す事が出来る……
 泣き続ける政宗を抱きしめて、元親が空を振り仰いだ。不覚にも、鬼の目に涙と言う状況にならない為に。
 満天の星空の下、涙で煌いた政宗の隻眼も空を仰いだ。
「あの星をあんたにやるよ、政宗」
 西の空、水平線の近くに一際大きく輝く明星を元親が指差した。
「あの星が空にある限り……それが俺の『ずっと』だ…」
 元親が指差すのは明けの明星。幾千も幾万もの夜の空に輝いた星だ。
「……snobbish……でも…、かっこいいぜ元親」
 政宗のしゃくり上げて紅くなった鼻の頭に、元親の唇が軽く押し付けられた。
「奥州王を娶ろうって豪傑だ。かっこよくなきゃ、しょうがねぇだろ?」
 口付けられて、政宗が目を閉じる。暖かい涙が元親の頬も濡らす。
 …この男には、初めから全部預けてよかったんだな……元親の腕が信じられる。元親の胸が信じられる。
 元親を信じる自分を、政宗やっと信じてやれることが出来た。
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