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ゲーム系ニ次創作です
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拍手下さった方、ありがとうございます!

↓………ほとんどオリジナル……?

 子猫は順調に大きくなった。目も開いて、大きな黄色い瞳が慶次を母猫のように見るようにもなった。
「体重も順調に増えてるね」
 獣医も子猫を抱き上げてにこにこと笑っている。
 今日は猫を拾ってから一週間目、健康診断の為に来ていた。
「もうすぐ、ボランティアの人来るけど、逢ってみる?」
 たまたま近所だったから行った動物病院は、捨て猫の里親探しや避妊手術のボランティア活動をしているところだった。
「うん」
 今日は慶次が拾った子猫を引き取りに来る人がいると言うのだ。結局、慶次も2匹の子猫の世話をしてみて、6匹は無理だと判った。きちんと世話を出来ないなら、全部の子猫を引き取るのは自己満足でしかない…これは小十郎にも言われた。慶次自身が、お座なりに子猫の世話をするつもりも無かった。
 ……だって、この子達には俺がお母さんだもん………
「こんにちは」
 診察室のドアを開けて桜さんとおばあちゃんが入って来た。
「あら、秘密にして驚かそうと思ってたのに」
 小柄なおばあちゃんは慶次を見て微笑んだ。
「え…じゃぁ、この子達おばあちゃんちの子になるの?」
 慶次の顔がぱぁっと明るくなった。
「1匹だけね。私がお世話を出来るのはそのくらいね」
 桜さんと仲良くなれる子がいいわね、とおばあちゃんが桜さんを子猫のケージの側に座らせた。
 ブルーグレーの柔らかい毛並みの背中を丸くして、桜さんがケージの匂いを嗅いでいる。中の子猫達はよちよち歩きで桜さんに近付いて、みぃみぃと可愛い声で鳴いている。
「桜さんは三毛ちゃんが気に入った?」
 ケージ越しに額を寄せる桜さんと小さな三毛猫。先生がケージの中から三毛猫を取り出すと、桜さんが小さな子猫の背中を嘗めた。みぃみぃと鳴く子猫も、桜さんにしがみつこうと小さな前足を伸ばしている。
「決まりね。先生、よろしいかしら?」
 おばあちゃんも嬉しそう、先生もナースも…慶次も嬉しくて堪らない。
 新しくミルクの缶詰めを買って帰る慶次と桜さん達。子猫は3匹、慶次の持ったケージに入って揺られている。
「あのね…おばあちゃんは、ずっと小十郎さんの大家さんなんでしょ?」
 慶次、気になっていた事を思いきって尋ねてみようと思った。
「小十郎さんは猫を飼ってた事があるの?」
 子猫を可愛がってはいるが、小十郎が時折見せる何かを思い出すような目が気になっていた。子猫を飼う事になった日も、小十郎とおばあちゃんの会話には何か訳があるようにも思えたし……慶次、小十郎の事が知りたい。一緒に暮らすようになって……いつも、怒ったような顔をしていた小十郎が慶次に優しい笑顔をくれるようになって、仏頂面だと思っていたのは照れた顔だと知ったり……小十郎の事を知る度に、慶次の胸の中の宝箱に仕舞われた宝物。クリスマスにきれいなバラをくれたり、バレンタインデーに山ほど指輪をくれたり、小十郎も慶次を喜ばせようとしてくれる……それが、慶次の宝物。
「片倉さんに聞かないの?」
 おばあちゃんに聞かれて、慶次黙った。
「そうねぇ……慶ちゃん、ちょっとお茶を飲まない?」
 獣医さんの入っているマンションには、ペットを連れてゆけるドッグカフェがある。
「桜さん、大丈夫?疲れない?」
 心配そうな顔をする慶次に、桜さんが小さくにゃん、と鳴いた。
「桜さんもあのお店は好きなのよ」
 今は、桜餅もあるのよ、というおばあちゃんの言葉に、慶次が負けた。二人と4匹で、アフタヌーンティにする事にした。

「片倉さんの飼っていたゆきちゃんは、桜さんとは姉妹の猫だったの」
「ゆきちゃん…」
「そう、偶然ね」
 暖かい緑茶の湯気の中でおばあちゃんがにっこりと笑った。
「……ゆきちゃんね……交通事故にあってしまったのよ、大きなトラックでね。その頃、片倉さんと一緒に暮らしていた女の人と一緒に……死んでしまったの……」
 慶次、言葉が出なかった。小十郎と暮らしていた女の人、死んでしまった猫とその人………。
 ケージの中でみぃみぃと子猫達が鳴いている。
 ………小十郎さんが一緒に………
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